行って、見て、感じて ~災害復興スタディ&ボランティアツアー
VSCでは、コロナ禍以前に、災害復興スタディツアーと称し、東日本大震災の被災地域を訪問し、震災に関連する学習プロジェクトを行っていました。今年度は、学習場所において受入れが始まっていることが確認できたため、このツアーを4年ぶりに開催しました。
東日本大震災当時、幼稚園生~小学校低学年だった学生たちは、当時のことを覚えているが詳細はわからない、という状況です。今回、被災した現地に行くことで、災害が起きた場所で、当時の様子を見聞きし感じてもらい、将来に活かしてもらいたいとの思いを強くして、計画しました。
開催したのは6月17日(土)~18日(日)の1泊2日で、宮城県亘理町・石巻市・東松島市に伺いました。今回はスタディとともに、震災がきっかけでつながってる現地児童センターでのボランティア活動も同時に実施しました。活動した場所や見学先について紹介します。
1,亘理町立中央児童センター
震災後に先輩から引き継いで実施している亘理町の児童センターでボランティア活動を行いました。震災後に生まれた子どもたちも来ているので、災害時の話をすることはありませんが、通常の遊びのボランティアを通じて、楽しい交流のひと時を過ごしました。
<学生の感想>
〇今回遊んだ子どもたちは皆、東日本大震災以降に生まれた子どもたちであることに気づき、これからもっと大震災を経験していない世代が増えていくのだと実感しました。今後を担う子どもたちのためにも、伝え語り継ぐと共に、資料や映像など、記録も大切に残していく必要があると思います。
〇子どもたちはとても元気で圧倒されました。被災を実際に経験していない年齢のこどもたちが、被災することなく健やかに亘理町で大きくなってほしいと思いました。小学生が楽しそうにレクリエーションに参加してくれていてよかったです。
2,亘理町「3.11震災語り部の会ワッタリ」の方からのお話
亘理町で起きた震災時の状況を動画で見たのち、荒浜地域をバスで巡りながら、当時のエピソードなどを伺いました。亘理町には阿武隈川の河口部があり、津波は川を遡上して堤防そして隣町につながる大きな橋を越えたそうです。語り部をしてくれる人が減っているそうで、引き継いでいってくれる若い人が欲しいという話もしておられました。
<学生の感想>
〇心に残ったのは「一度避難したら戻らない」という言葉です。一度避難したにもかかわらず、家に戻ってしまったために被害に遭ってしまった人が多くいるという話を聴きました。きっと、貴重品や避難生活で必要と考えたのだろうと想像しました。命より大切なものはない、命さえあれば、この言葉をいざという時に思い出せるように、防災・災害について考えていきたいです。
〇語り部さんが「生きているのが申し訳ない感情だった(当時)」と話をしていましたが、それだけ身近な人を失った方が多いということであると考え、本当に心からのつらさを乗り越えてこられたのだと感じました。
〇震災が起きた時に、町の治安が悪くなったという話も、とても印象に残りました。みんなが十分な食事や、生活用具を手に入れられないとき、町の治安というのは悪化するのだということが分かりました。津波や地震によってみんなが毎日不安を抱えて生活する中で、治安が悪いと人々の不安はより大きかったのだろうと思いました。
3,石巻赤十字病院における講話
石巻赤十字病院の研修センターで災害時の活動、特に東日本大震災の対応とD-MAT隊の活動について話を伺いました。そして、避難所生活では段ボールベッドの使用が有功であることを学び、実際に組み立てる体験もさせていただきました。
<学生の感想>
〇震災当時、病院の医療従事者の方々がどのように動いたのか、状況はどうだったのか、何を思っていたのかなど、詳しく知ることができました。普段から訓練を行い、マニュアルを作っていたからこそ迅速な対応ができたのだと思います。加えて想定外のことに対しての対応も大切になってくるのだと感じました。衛生面やプライバシー面・環境整備・精神的ケア・健康面など、考えなくてはいけないことがたくさんあり、その対応を求められると知り、印象に残りました。
〇避難所での生活の不備や精神的ストレスなどで亡くなる「災害関連死」の人数が多く、驚きました。講話の中にあったように避難所は避難してきてそこで終わりではなく、避難してからの生活を考える必要があり、その面を重要視して備えることが災害関連死を減少させる一つの方法であるということを学びました。
〇段ボールベッドを実際に組み立て、手軽さや強度を実際に体験することができました。中に物が入れられる設計になっていることや以前オリンピックで用いられていたものも同じだとお聞きし、もっと身近な存在になれば、病院などの施設にとどまらず多くの人の備えになるのではないかと感じました。
4,石巻市震災遺構「門脇小学校」
津波の被害を受けた地域にあった小学校が2022(令和4)年4月より震災遺構となり公開されたので、語り部の方に案内をお願いし、2班に分かれて館内をめぐりました。門脇小学校は津波に加え、火災の被害も受けた学校です。幸い避難していた子ども・町の方々は裏山に逃げることができたということで、その状況についてもお話しいただきました。
<学生の感想>
〇校舎内を実際に見ることができ、被害の大きさに驚いて言葉が出ませんでした。教壇を使って避難経路を作ったと聞いて、ひらめきがすごいと思いました。
〇最初に観た動画では、実際の卒業生や先生方の体験談を聴けて、とても貴重なものでした。児童たちが助かったのは普段の避難訓練がしっかりされていたからで、高学年の子どもが低学年の子ども面倒を見てあげていた話はとても心があたたまりました。
〇学校で積み重ねてきた訓練を土台に、6年生の子が1年生の子をおぶって避難したり、雪に濡れないよう配慮したりと、その場その場に応じて自分のやるべきことを精一杯やっていたことに心打たれました。普段から学年を超えて助け合える関係を築き続けることが非常時に役立つと学ぶことができました。
5,未来学舎「KIBOCHA(キボッチャ)」
東松島市旧野蒜小学校を改装してできた、希望・防災・未来(future)をキィワードに、心の復興をテーマにしている施設です。東松島市では、震災遺構として小学校を残すのではなく、活用する方針を決め、現在は震災についての学習や防災教育などを行ったり、泊まることもできる施設として運営されています(市の委託事業)。
ここでは、東松島市の自然と災害に関わる動画を観た後、防災に関する学習として、ロープワークを行いました。外れないロープの結び方(もやい結び)を一つ覚えておくことで、誰かを助けることができるかもしれない、ということを教わりました。
<学生の感想>
〇明るく楽しい施設として地域に残されており、門脇小学校とは違った角度から学ぶことができる施設でした。小さな子どもたちも多く訪れており、一日目のレクリエーションでも感じたように震災を経験していない子どもたちが遊びながら学習することができると感じ、震災での学びや未来の財産を残していける役割を感じました。
〇必ずしも過去とばかり向き合って生きているわけではないのだな、そして未来を見据えて行動を起こしていくことが大切なのだということを学びました。
〇防災関連学習として、ロープや縄を使ったすぐにできる結び方を習いました。津波だけでなく、色々な場面で使えるものだと思うので、私も忘れないように練習していこうと思います。そして、将来、子どもたちに教えてあげたいと思いました。
6,ツアー全体のふりかえりなど
最後に未来学舎の教室をお借りし、短い時間でしたがツアー全体の振り返りのグループワークを行いました。印象に残ったことを出し合い、今後自分たちに何ができるのか、考えてもらいました。
<ふりかえりで気づいたこと>
〇学科の異なる学生が集まって意見を出し合ったら、それぞれの専門によって印象に残った言葉が異なり、興味深かったです。同じような意見が出た部分は多くの人が大切であると感じたと考えられるので、重要であったり、今の私たちに必要な知識であると考えました。一方で、少なかった意見については、それぞれ専門職として大切な観点で、お互いに学ばなければいけない部分といえるでしょう。他学科との交流でさらに多くのことを学べるということを実感でき、参加して良かったと感じました。
〇グループ内では、被災状況などについて知ること、知らない人々にも伝えていくことが重要であるという意見が多かったと思います。また、人々の健康という部分にも目が向いていたのが印象的で、身体的なものだけでなく、被災者・支援者ともに、精神的な面でもケアが必要であると考えられており、直接目には見えない部分にも寄り添うことのできる医療者・人でありたいと感じました。
〇一人ひとり印象に残ったことが違って、話し合いをした時にとても面白かったです。私も今回宮城県や震災について興味を持ったので、もっと知識を増やして考えを深めていきたいです。
<全体の感想・今後に生かしたいこと>
〇津波や避難所、復興について初めて知ることが多くて、学ぶことばかりでした。被災地についてもっと多くの人に知ってもらいたい、群馬に住んでいるからといって安心ではない、など私が学んだこともたくさんの人に伝えて、記憶からなくなることがないようにしたいと思いました。
〇東日本大震災から10年以上が経過し、震災の記憶が薄れつつあります。私自身も震災当時のことは何となく覚えていますが、はっきりした記憶しているわけではありません。何度も現地に足を運び、語り部さんのお話を聞いたり、震災遺構を訪れて、それを周りの人たちに語り継ぐということが大切だと感じました。
〇実際に被災された方の話を直接聞けたことが貴重な経験でした。災害に備えることの大切さを身に染みて実感することができたとともに、災害に対する考え方も変わりました。
〇宮城県についても全く知らなかったので、今回たくさんのことを知ることができて良かったです。今回特に印象に残ったことは、宮城県には美味しい食べ物がたくさんあるということです。もっと宮城の良さを全国の人に伝えて、たくさんの人に宮城県に行ってもらいたいです。宮城県に観光客が増えることで、宮城県が活気付き、もっと復興が進んでいくと思いました。
1泊2日でハードなスケジュールとなりましたが、学生たちはしっかり活動し、学び、現地の思いを受け止めて帰ってきたと思います。今後学習していく中で、体験したことを活かし、社会人になってからも伝えていく存在になって欲しいと思います。(文責:事務局)


