2017.10.03 地域・研究活動

記憶関連タンパク質の発現変化を生きたマウスで可視化することに世界で初めて成功(薬学部分子神経科学研究室・准教授・福地守)

脳由来神経栄養因子(BDNF:Brain-derived neurotrophic factor)は、記憶や学習に代表される高次の脳機能の発現に重要なタンパク質です。また、うつ病やアルツハイマー病などの精神疾患や神経変性疾患においては、BDNF量が低下することが報告されています。したがって、BDNF発現の制御機構を解明することは、脳神経系の疾患の原因解明や治療法の開発に結びつくことが期待されます。私たちは最近、ホタルの発光酵素ルシフェラーゼを利用して、発光によりBDNF発現変化を解析可能な遺伝子改変マウス「BDNF-Lucマウス」を作出しました。このBDNF-Lucマウスでは、BDNFの発現が増加するとルシフェラーゼが産生されます。ルシフェラーゼは、基質と反応すると発光を生み出すため、BDNF-Lucマウスを用いることにより、BDNFの発現変化を発光の変化を指標として解析可能となることが予想されます。そこで、生体BDNF-Lucマウスにルシフェラーゼの基質を投与したところ、実際に発光が検出され、脳内のBDNF発現上昇の様子を発光により可視化することに成功しました。一方、この解析の途中で、BDNF-Lucマウスの腹部からも発光が検出され、肥満のマウスでは、脂肪組織でのBDNF発現が増加することを見出しました。したがって、脂肪組織に発現するBDNFは、肥満の病態と何らかの関連性があることが考えられました。以上より、BDNF-Lucマウスを用いることで、生きたままBDNF発現変化を計測することが可能となりました。この技術を用いることで、高次脳機能発現におけるBDNFの役割や脳神経系の疾患におけるBDNF発現変化をより明確に解析可能となることが期待されます。また、BDNFが肥満などの代謝性疾患とも関わる可能性があり、BDNFの新たな機能性を発見することが可能となるかもしれません。

雑誌名:Scientific Reports
発表年月日:2017年7月10日
論文名:Visualizing changes in brain-derived neurotrophic factor (BDNF)expression using bioluminescence imaging in living mice
(生体マウスにおける生物発光を利用した脳由来神経栄養因子(BDNF)発現変化の可視化)

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