2022.11.09 薬学科
薬の副作用である薬剤性偽アレルギーをP2X4受容体が促進していることを発見
高崎健康福祉大学薬学部薬効解析学研究室(代表:松岡功教授)の吉田一貴助教は薬剤性偽アレルギーが細胞外ATP受容体であるP2X4受容体によって悪化することを見出しました。薬剤性偽アレルギーの原因として薬物によるMrgprX2を介したマスト細胞の活性化があり、ひどい場合には薬による治療の継続が困難になります。MrgprX2はバンコマイシンやシプロフロキサシン、モルヒネなど多くの塩基性薬剤を認識しますが、活性化するには通常の投与量では到達しない高濃度の薬物が必要であり、なぜ薬剤によってアレルギーが惹起されるのかは不明でした。そこで、MrgprX2を介した反応を促進するメカニズムについて検討した結果、細胞外ATPによるP2X4受容体がマスト細胞の活性化を促進していることを見出しました。この結果は、MrgprX2だけでなくP2X4受容体を阻害することでも薬剤性偽アレルギーを抑制できることを示唆しています。本研究を発展させることで、副作用の少ないより安全な薬物療法の開発につながることが期待されます。
本研究成果は、『Scientific Reports』に掲載されました。
【掲載論文】
雑誌名:Scientific Reports
論文名:P2X4 receptor stimulation enhances MrgprB2-mediated mast cell activation and pseudoallergic reactions in mice.
(P2X4受容体の刺激はMrgprB2によって媒介されるマスト細胞の活性化とマウスの偽アレルギー反応を促進する)
著者:Kazuki Yoshida, Shota Tanihara, Yuki Miyashita, Kosuke Obayashi, Masa-aki Ito, Kimiko Yamamoto, Toshiyashu Imai, and Isao Matsuoka
(太文字は本学教員、下線は卒業研究生および大学院生)
DOI:10.1038/s41598-022-21667-6
【用語】
・薬剤性偽アレルギー反応:薬物によるアレルギー反応のうち、IgEなどの抗体を介さないアレルギー反応の事を言う。抗体を介したアレルギー反応同様に、マスト細胞の活性化が関与している。
・P2X4受容体:細胞外に存在するATPを認識するP2受容体のサブタイプの一つ。イオンチャネル型受容体で活性化によりカチオンを透過する小孔を開口する。
・MrgprX2:mas関連Gタンパク質共役型受容体X2の略名。マスト細胞特異的に発現し、さまざまな塩基性物質を認識する。MrgprX2が刺激されたマスト細胞は活性化し、ヒスタミンなどを放出する脱顆粒が惹起される。