2025.07.27 薬学科
第31回 高校生のための科学実験講座を開催しました
第31回高校生のための科学実験講座を7月21日(月、祝日)に開催しました。今回は、「薬の効き方の個人差について遺伝子を基に考えてみよう」というテーマで薬効解析学研究室の伊藤政明 准教授、吉田一貴 講師、松岡功 教授の指導により実施しました。本講座には、30名の高校生が参加しました。
はじめに、薬の体内動態について講義を行いました。薬が体の中で作用を示すためには適切な血中濃度を保つ必要があり、薬は正しく服用することが重要であることを学んでもらいました。また、薬やアルコールはチトクロームP450(CYP)に代表される酵素で代謝されて体外に排出されることや、代謝酵素の活性はDNAの遺伝子配列によって個人差があることを学んでもらいました。本実験では、個人遺伝情報を利用するため、丁寧な説明と実験で自身のDNAの使用の有無、使用する場合は同意の意思を確認しました。
実際の実験では、抽出したDNAを用いてPCR法と電気泳動により、エタノールの代謝酵素であるアルデヒド脱水素酵素(ALDH2)の遺伝子型の解析を行ないました。まず、口腔粘膜から細胞を採取し、DNA抽出カラムを用いてゲノムDNA溶液を調製しました。調製したDNA溶液を異なるプライマーセットを含むPCR反応液に加えて加熱することでDNAを増幅しました。アルコール代謝に関係するALDH2遺伝子の活性型と不活性型のDNA配列は1塩基だけ異なっていることを利用し、ミスマッチPCRという原理に基づき反応を行いました。こうして得られたPCR産物に色素を加え、アガロースゲルによる電気泳動を行い、その泳動パターンからALDH2の遺伝子型を解析してもらいました。
あわせて、アルコールパッチテストも行ってもらいました。エタノールと3種の濃度の異なるアセトアルデヒド溶液を絆創膏にしみこませて腕に貼り付け、10分後にはがして皮膚の発赤の有無や程度を確認しました。最後に、アルコールパッチテストの結果と遺伝子解析で得られた酵素のタイプが合致しているかを確認してもらい、お酒に強い体質か、弱い体質かを遺伝子型と表現型の関係から考察してもらいました。以上の実験を通して、遺伝子のわずかな違いがアルコールの代謝に影響することを学んでいただきました。将来お酒を嗜む機会があれば、今回の結果を参考にしていただきたいと思います。そして、このような概念を薬の代謝に置き換えて考え、薬物代謝酵素の遺伝子多型がその酵素活性に影響を与えることにより薬の血液中の濃度が変動し、このことが薬の効果に個人差が生じる要因の一つになることを学んでもらいました。
なお、個人遺伝情報の保護として、実験で使用した参加者のDNAサンプルは、ひとつの容器に集めて塩酸で分解して適切に廃棄処理しました。
参加した方からは下記のコメントを頂きました。
・実際に実験器具を使うことが出来てとてもよい経験になりました。実験講座を通して、実験をサポートした薬学部の学生や薬学部ヘの進学を目指している他校の生徒とも交流ができてよかった。
・PCR法は高校の授業で習っただけで、自分で実験をしたことはなかったので、手順を1つ1つ学びながら体験できてよかった。
・実験を通して遺伝子型による個人差について楽しく学べた。
・DNAを使って薬の効き方などに個人差があることについて知ることができた。個人差があることを知って薬物代謝酵素の重要性を知れた。
薬学部では夏休みの期間中に、公開講座「高校生のための科学実験講座」を開催しております。この講座は、薬学に関連する基礎的な実験を通して大学での研究内容や講義の雰囲気を肌で感じてもらい、科学実験の面白さや薬学という学問の魅力を知ってもらうことを目的としています。薬学に限らず理系科目に興味のある人、科学実験をやってみたい人、大学の施設の中で学生生活を体験してみたい人は奮ってご参加ください。
次回の第32回高校生のための科学実験講座は2026年の夏に実施を予定しております。詳細については「第32回 高校生のための科学実験講座」のパンフレットができ次第、ホームページなどで案内致します。


