2018.07.06

研究成果がBiochemical and Biophysical Research Communications誌に掲載されました

永井准教授・熊倉慧助教と東京大学の研究グループによる論文が、Biochemical and Biophysical Research Communications誌に掲載されました。

雑誌名:「Biochemical and Biophysical Research Communications」(掲載日:2018年4月6日)

論文タイトル:Short-term mastication after weaning upregulates GABAergic signalling and reduces dendritic spine in thalamus.

著者:Mana Ogawa*, Toshitada Nagai*, Yoshikazu Saito, Hitonari Miyaguchi, Kei Kumakura, Keiko Abe, Tomiko Asakura.(*は同等の貢献)

URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0006291X18305060?via%3Dihub

 

【要旨】

咀嚼は脳機能と精神的健康を増強させるが、幼児期の咀嚼が神経発達に及ぼす影響の分子メカニズムは、明らかにされていない。そこで、離乳直後に粉末飼料または固形飼料を与えたラットの、神経回路における遺伝子発現を解析した。

視床の遺伝子発現パターンは、飼料によって異なった。さらに、遺伝子オントロジー(Gene Ontology, GO)解析で「化学シナプス伝達」と「樹状突起シナプス形態形成の正の調節」の2つのGOタームが、有意に濃縮された。「化学シナプス伝達」に関して、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(=GABA合成酵素)とGABA受容体群の発現が、固形飼料群で上昇した。また、小胞GABAトランスポーター(vesicular GABA transporter, VGAT)など関連遺伝子群の発現も上昇し、咀嚼がGABA作動性シグナル伝達を活性化することが示唆された。

「樹状突起スパイン形態形成」に関しては、Ingenuity Pathway解析(IPA)も行ったところ、「神経突起の伸長」、「神経突起の分岐」、「ニューロンの分岐」の低下を予測した。さらに、視床の腹側後外部と腹側後内部におけるスパイン(シナプスを構成する棘状構造)の数が有意に減少した。これらの結果は、早期の発達における咀嚼がGABA作動性シグナル伝達遺伝子の発現を促進し、スパインを減少させることを示唆している。

【解説】

 発達期の脳では、いったんスパイン数が増加し、それが「刈り込まれる」ことで、神経細胞のネットワークが成熟化します。この作用は、神経伝達物質GABAによって促進されます。本研究では、咀嚼がGABAによる神経伝達、さらにスパイン刈り込みを促進することが示唆されました。咀嚼が、実際に神経細胞のネットワーク成熟化に寄与しているか、どのような成熟化が引き起こされているか、については今後の課題ですが、脳における効果のメカニズムを解明する大きな一歩であると考えています。