高崎健康福祉大学


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学部長メッセージ

学部長メッセージ

医療の進歩を支える
次世代の優れた薬剤師の養成を目指して

薬学部学部長 宇井 理生(うい みちお)

東京大学名誉教授、北海道大学名誉教授、東京都臨床医学総合研究所名誉所長、徳島文理大学名誉教授
日本薬学会賞、ポール・エールリッヒ国際医学賞、日本学士院賞、瑞宝中綬章など、受賞多数


はじめに

本薬学部は、全国で約50校の私立薬科大学の一学年当りの定員が平均200名を優に越える中にあって、ただ一校100人以下の90名という少人数教育を実践します。教授陣には、主として国公立大学の薬学部・医学部の現役助教授クラスから、教育者としての豊富な経験と研究者としての優れた実績を兼ね備えた実力者を抜擢しました。彼等の推薦で採用された助教授、講師、助手にも豊富な人材が揃っています。本薬学部の学生の皆さんは、この優れた教師達に6年間それぞれの個性に合わせたマンツーマンの指導を受け、卒業後はその結果得られた実力を充分に生かして社会に貢献することが期待されています。

本薬学部の目指す教育理念などについては、以下に7項目別にやや詳しくご紹介しました。最初にサマライズ致しますと、薬剤師に要求される薬学とは、応用科学としての薬学ですが、応用する能力は基礎を究めることによって、はじめて身に付くものです。この理念に従って、本薬学部の最初の1,2年次には、有機化学、生命科学、それらを支える物理化学、分析化学などを徹底的に学び、2年次後半からは薬理学、薬剤学、基礎医学へと広がります。2年次にはこれらの教科の実習もスタートします。これらの基礎教育の上に5年次からは薬剤師実務実習が始まります。コメディカルメンバーの養成の実績を有する本学にしてはじめて可能となるこれら応用学習の学外環境も充実しています。

学生の皆さんが、本薬学部の教育理念を理解し、一人一人が意欲を持って自発的に学習し、幅広い知識と優れた技術を身に付けたコメディカルメンバーの一員として、卒業後も立派に活躍されることを、心から願います。

薬学と薬学教育の変遷

殆どの疾病(病気)は医薬 (くすり)で治療されます。従って、現在医療現場で使用されている医薬の種類は膨大なものです。これらの医薬の大部分は比較的小分子の有機化合物で、非常に簡単で共通な化合物から化学合成によって作られ、それぞれに固有の構造が独自の薬効(くすりとしての効力)を発揮するのです。

今から半世紀前には、すべての有効な医薬は、薬学がその中心に置いた有機化学の力で、構造は確定し、完全に純粋な化合物として合成・供給されていましたが、その一方でこれらの医薬の大部分は、疾病の治療に有効であることが経験的に知られているだけで、何故有効なのか、その理由すなわちヒトの身体に作用するメカニズムがほとんど分っていませんでした。しかしながら、その頃からヒトをはじめとする生物の身体の仕組みの研究がスタートし、今日「生命科学」と総称される科学分野が急速に発展するにつれて、事実上全ての医薬の作用のメカニズムが解明されるようになったのです。医薬を真に理解するためには生命科学の知識が不可欠のものとなり、有機化学と並んで薬学の教育の中心を占めるに到りました。

半世紀前、有機化学だけが薬学の中心であった頃から既に、薬学部のカリキュラムは、他の学部・学科に比べて極めて過密なものでした。詳細で高度な有機化学、医薬を分析する分析化学、衛生面からアプローチする衛生化学などに加えて、医学部から講師を迎えて、生理学、細菌学、解剖学なども開講されていました。薬学は伝統的に実習中心で、午前は講義、午後は実習という毎日だった上に、薬学独自の卒業研究実習によって、新しい分野を自ら開拓するという気風を学生に植え付けることにも力を注いできました。そこへ生命科学が加わったのですから、カリキュラムは年々超過密なものとなって行き、遂に就学期間を2年延長するという6年制を、平成18年から日本全体の薬学が採用することになりました。

6年制を生かした「薬に関する基礎教育」を徹底します

高崎健康福祉大学はこの6年制発足に合致させて、新薬学部をスタートし、延長した2年間を活用して、従来の実習中心の教育方式を踏襲し薬学の全分野の基礎の完全な習得の上で、卒業研究実習、薬剤師実務実習に臨むことを計画しています。基礎とか、初歩とかの段階は、実は教えるのも教わるのも一番難しいのです。しかしながら、幸いにして基礎や初歩を完全にマスターすれば、その後の学習は容易になり、応用面へ進出することが可能となります。6年制を最初からこのような基礎の習得に当てるカリキュラムは平成18年発足の当薬学部に独自のものです。

「コメディカルメンバーの一員としての薬剤師」を養成します

日本に限らず、欧米先進国では、医療は医師を中心にした医療チームによって行われています。この医療チームを構成する医師以外のメンバーをコメディカルメンバー(略してコメディカル)と呼びます。高崎健康福祉大学では、今まで、健康福祉学部で管理栄養士、精神保健福祉士、社会福祉士、看護学部で看護師、と多くのコメディカルを養成して来ました。そこへ新しく薬剤師というコメディカルを養成する薬学部が加わります。

一般に大学では教育は原則的に学部単位で行われますから、一学部で構成される単科大学もあれば、複数の学部が集まった総合大学もあります。学部が独立した教育の単位であるからには、単科大学でも総合大学でも、全く同じ教育効果が挙がるように思われますが、教員、学生ともに同じキャンパス内の他学部と交流できる総合大学の方が学生の視野が広がるという利点があることは多くの大学関係者が認めるところです。

日本の薬系大学では、国公立は殆どが総合大学で、私立はもともとは単科大学が多かったのですが、最近は総合大学も増えてきました。しかしながら、本学のようにコメディカル養成の学部で構成されている薬系大学は、他に例を見ないものです。ここが本薬学部の大きな特徴です。在学中からコメディカルの一員としての自覚を持って、薬剤師のあり方を自覚する新しい薬剤師の誕生が期待されます。

「薬から見た医学」を体得するための新しい教育理念を導入します

殆どの疾病の治療が医薬を服用することによって行われ、莫大な数の医薬が臨床で使用される現在、医師は治療薬の選択に当って適切な助言を薬剤師に期待しています。しかしながら、医療現場では、医師が患者を診察して処方を書く診察室と、薬剤師がその処方箋を受け取って、内容を確認して調剤し患者に服薬指導をする薬剤部、薬局は遠く離れていて、具体的な問題に関して、いちいち会話することは実際上不可能です。むしろ、日頃から医師と薬剤師とが医療問題一般について意見を交換して信頼関係を構築することが期待されます。このような信頼関係があってはじめて、勤務する部署が遠く離れていても、電話で1,2分会話するだけで、正確な具体的情報を提供することが可能となります。

臨床医師にとって唯一必要な科学は臨床医学です。いわば「病気から見た医学」です。そうして、医師は化合物としてのくすりのことはほとんど知りません。医師に薬学を説いても理解されることは少ないでしょう。といって、医学に関しては彼等は専門家ですから、薬剤師が医学について何かを語っても医師にとっては何の役にも立ちません。医師が理解でき、且つ新しい視点として興味を持ち、有益なのは本薬学部で教授される「薬から見た医学」です。「薬から見た医学」の内容は、本薬学部の学生が6年間の教育の結果体得できるものですから、その内容をここで述べることは不可能です。代ってこの新しい医学を教授する教育理念を述べます。

当然のことですが、医師は余暇を割いて薬剤師を先生として何かを学ぼうと思っているわけではありません。彼等は、その日の午前、昨日、あるいは1週間前に臨床の場で経験した問題に関して薬剤師に意見を求めているのです。すなわち、医師とのコミュニケーションにおいて、テーマは常に医師から提起されます。薬剤師は常にそのテーマにある程度の興味と関心を抱き、もしその場で正確な知識が披露できなくても、直ちに適切な文献検索などを行って、医師の期待する情報を1,2日のうちに医師に提供し、討論をすることが要求されます。このような全ての医学領域に柔軟な対応をするために必要なものは丸暗記した知識ではなく、基礎的な教養とでも呼ばれるものです。既に項目3で、基礎教育の重要性を指摘しました。

それぞれの細分化された専門分野、ないしは教科については、その分野の全ての知識の出発点となる基本的な法則性、全てに共通する総括的観点、などのようなものが存在します。初心者はまだ具体例を知りませんから、このような基礎的理解の獲得は極めて難しいのですが、既にその分野をマスターした教員は、講義の進行とともに常にこの原点に立ち返り、この新しい知識は基本的な法則性の何処に対応するか、総括的観点からどのように理解されるか、などを指摘し、必要に応じて実習でも基本的事項を体得させることを試みます。このようなアプローチの繰り返しで、基本的法則、総括的観点をおぼろげながらでも理解した学生はその分野の新しい知識を、自発的に文献から次々と習得し、全体像を身に付けるようになるのです。

このプロセスは実は自然科学研究の方法論そのもので、研究者養成のための教育法を優れた薬剤師の養成に適用するものなのです。このような斬新な教育を行うためには、教員自身が優れた研究者であることが必要です。本薬学部は、完備した学生実習室を備えているだけでなく、最新の設備と充分な広さをもつ教員研究室を有しています。また、別の欄(教員紹介欄)で教員全員を紹介しておりますが、極めて優秀な研究者達を教員として招聘しました。このように優れた研究実績を有する本学教員は講義・実習・セミナーを通じて学生の教育に充てる時間以外は、この教員研究室で自らの研究に励み、その研究のプロセスや成果を明日の教育に生かし、この斬新な教育理念を支えているのです。

この新しい教育を受けて「薬から見た医学」を体得した本学部卒業生は、医療現場で医師に信頼される優れた薬剤師として自立できるばかりでなく、他の多くの分野で「研究者マインド」が要求される指導的立場に立つことができるでしょう。

日本一の少人数教育を実践します

本薬学部の学生定員は僅か90名です。文科省が作製した資料によると、平成18年度の私立薬科大学は本学を含めて49校ですが、他大学の最少定員は120 名(3校)、最大420名の定員の大学も1校あって、49薬学部の平均定員は1学年223名に達します。国立大学薬学部の多くは定員80名ですが、100 名のところもあって、公立校は100-120人ですので、国公立大学薬学部の定員の平均は約87名、本薬学部はまさに私学では唯一、国公立並みの少人数教育を施します。前項で述べた独特の教育理念に基づく教育も、この少人数だからこそ実現するのです。

さらに、全教員が学生一人一人のチューターとして、個別に生活相談、学習相談に常に応ずる態勢を作ります。少人数の利点を生かし、一人の教員が担当する学生数は、1学年当りせいぜい4-5人に留まりますので、きめ細かい個別相談に応ずることが可能です。最初の3年間は名簿順に割り当てますが、4年生になって、専攻したい分野、直接指導を受けたい教員のイメージが出来上がった段階で、学生の希望を尊重し、その教員の属する研究室に配属されて、卒業研究実習から卒業後もその研究室出身の先輩、後輩と常にコミュニケーションを保ち、生涯の師を囲むサークルが形成されるのです。

理想の薬剤師を医療社会へ送り出します

6年制薬学教育の特徴の一つは薬剤師実務実習です。実務実習は大学近隣の病院薬剤部、薬局で行うことが原則ですが、本学はもともとコメディカル養成校として、群馬県内の多くの医療機関と密接な連携関係を保ってきました。このよき歴史と少人数教育が、薬剤師実務実習にも充分に生かされ、その結果優れた薬剤師を養成することができます。

さらに、5項で触れた医師とのコミュニケーションについても、調剤薬局勤務の場合には、薬剤師個人としては医師との接触が比較的難しい場合も予想されますので、前項の研究室単位で、教員がその薬局の関連病院と連絡を取り、またその研究室出身者同士の緊密な連係を生かして、自己研修の場を作り上げる態勢を常時整えます。卒後教育という言葉からは、卒業後も時々大学へ戻って最近の薬学の進歩の紹介を講義などの形で受けるというイメージが浮かびますが、既に紹介した本学部独特の教育理念で育てられた薬剤師にとっては、最近の学問の進歩をフォローすることは自己研修で充分でしょう。理想の薬剤師にとって必要な「医師とのコミュニケーションの場」を大学が卒業生のために整えるのが、最も重要な「卒後研修」です。本学では、この種の卒後教育を全学的に立体教育と位置づけています。

このようにして、理想の薬剤師像を具現した人材が社会に送り出されるのです。

薬剤師以外の多くの職種へも卒業生は適合します

上記7項目の新しい理念に基づく教育を受けた卒業生が、薬剤師以外の職種を選択することは、明らかに可能なことです。可能どころか大いに歓迎されることは明らかです。たとえば、現在の臨床検査技師の養成制度が確立したのは、40年ほど前で、それまでは、病院の臨床検査室には多くの薬剤師が勤務していました。当時は疾病の診断となる検査項目も少なく、優れた医師は診断のための新しい指標を求めて、分析化学に精通した薬剤師と組んで共同研究をしたものです。診断のためにヒトから得られるサンプルは必ずウイルスなどで汚染されていますから、清浄であるべき調剤室に持ち込むことはできません。臨床検査室から薬剤師が姿を消すとともに、このような医師・臨床検査室の共同研究は完全に消滅しました。当薬学部では、薬剤師の資格に加えて、臨床検査技師の資格を取得できるよう、そのカリキュラム、実習項目を整備します。この資格を取得すれば、ヒトから採血することができますから、服薬した医薬の血中濃度を時間を追って測定するなど、薬効の判定に有用な指標を薬剤師が得て、医療へのより直接的な貢献や医師との共同研究の復活も可能になります。

また、製薬企業では優れたMR(Medical Representative:医薬情報提供者)を求めています。MRの前身はプロパーと呼ばれる営業活動者に過ぎなかったので、もともと薬学出身者にはもっとも魅力の乏しい職種でした。真のMRの必要が生じても嘗ての悪いイメージを持つ薬学出身者の志望は少なく、企業は泣く泣く薬の知識の全くない文系学部卒業生を採用し、彼らに浅薄な知識を与えて即席のMRに仕立てて来ましたが、医薬情報を受けとる側の医師がこのようなMRを相手にするはずはありません。すでに記したように、医師は治療薬の選択の際の助言をいつも期待していますが、有効な助言であれば、薬剤師からでもMRからでも同じことです。職務としては、MRの方が薬剤師よりも医師とのコミュニケーションの機会が得やすいでしょう。本薬学部卒業生が優れたMRとして薬剤師と協力して医師との密接な協力関係を構築することを、多くの製薬企業が期待しています。

さらに、薬剤師の資格を取得後、本学部の教育理念で育てられた学生に期待されるのは、医学・薬学研究者への道です。本薬学部開設の3年後には6年制学部の上に4年制の大学院博士課程を設置します。本学部所属の教員のほぼ全員が大学院教員の資格を有しています。大学院の授業料は国公立大学と同じ水準に抑えられる上に、大学院在籍1-2年後には、リサーチアシスタント(研究補助者)、ティーチングアシスタント(教育補助者)の名称で国から恒常的に給与が支給されます。このような研究者への道を歩んだ卒業生は、4年の課程を経て薬学博士の学位を取得後、欧米への留学経験を経て、本薬学部の教員の後継者、全国の大学・研究所の教員・研究員、さらに製薬企業の研究所に迎えられて、創薬研究に携わるなど、洋々とした未来を拓くことができるのです。

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